「飲食店経営で大事な事」は、「FLR比率(Food:原材料費、Labour:人件費、Rental:家賃)で経営状況を見る」ことです。
FLR比率とは、Food(原材料費)、Labour(人件費)、Rental(家賃)の合計額が、売上の何割を占めるかの指標です。一般的に70%以下が望ましいとされ、それ以上だと採算がとりにくいと言われています。
実際に私が関わった中華料理店では、売上や利益もあり、在庫も借入も少ない状態でしたが、FLR比率は悪化していました。
◆お店の特徴
いわゆる町の中華屋さんで、創業も50年以上と古く、地元から愛され、常連客も多数いる家族経営のお店です。
ランチは定食やお弁当を中心に提供し、夜も定食を提供するなど、一人で来店するお客様が多いところでした。
◆経営状況
代表的な経営指標を全国で2年連続黒字の同業平均値と比較してみてみたところ、以下のとおりでした。
①収益性:売上は横ばいの状態でしたが、売上高総利益率や売上高営業利益率は前年より上昇
②効率性:棚卸資産回転期間は短く、良好な状態
③安全性:流動比率は高く、前年より上昇するなど健全な状態
以上のとおり、健全な状態でした。
しかし、年々FLR比率は悪化し、直近では90%を超えるまでになっていました。
◆収益性などに問題なくてもFLR比率が高いことがある
なぜならば、このお店の場合、以下の点が影響していたからです。
①ほとんど故障することなく、創業より使用している調理設備がある
⇒「減価償却費が少なく済んでいた」
②家族経営のお店
⇒「借入金が親族からのもので利息が実質ない」
③地元客が中心で常連客がいる
⇒「広告宣伝費がほとんど不要」
一方、このお店では、創業者である高齢のお父様が引退し、息子さんがあとを継がれました。
そのため、厨房を任せるスタッフを雇用することになり、一気に人件費が増え、FLR比を悪化させていました。
このようにFLR比率で経営状況を見ることは大事なことです。
話は横に逸れますが、一般的に町の中華屋さんは、FLR比率が低く抑えることができます。
なぜなら、以下の特徴があるからです。
①F(原材料費):
食材は余ったら翌日の弁当やランチに利用することで食品ロスの抑制が可能
②L(人件費):
家族経営(夫婦のみも多い)で人件費を抑制可能
③R(家賃)の抑制;
自宅(2F)兼店舗(1F)で家賃の抑制が可能
飲食店ビジネスは非常に難しいビジネスです。
経営を適切に行うには、「適切な仕入れ」、「原価や廃棄の適切な管理」、「調理技術の向上」、「集客数(回転率)のアップ」「接客力の向上」などを考える必要があります。
特に新規にお店をオープンする際は効率的な設備投資も考える必要があります。
私が関係したこの中華料理店も手づくりで味には自信のあるお店ですが、存続するお店として生き残るにはFLR比率での管理が必要でした。
実際、FLR比率70%を担保するには、売上を上げる(単価×購買客数×購買頻度)ことが求められますが、その際は、70%から逆算した売上目標を設定します。
そのために、
★利益率の高いメニューを把握し、それらをたくさん売るための仕組みづくり
⇒ABC分析を行い、よく売れる商品の中から利益率の高いものに絞ってサービスを提供する
★使い切れていない資産を有効活用する仕組みづくり
⇒例えば、時間という資産を考えた時、お客様が少ない時間帯はアルバイトを雇わず、思い切って店を閉める。ほかにも店内、設備、人員などムダになっている資産は有効に使える方法を考えれば利益に貢献します。
<今日のまとめ>
●FLR比率70%以下とする経営管理を実施する
また、FLR比率を下げるためには、
●利益率の高いメニューで売上を伸ばすこと
●使い切れていない資産(店内スペース、設備、人員、時間など)を洗出し、有効活用の方策を検討することで利益の上乗せを考える。