「メニュー管理はどのように行っていますか?」とお尋ねすると「あまりやってません」とお答えになるお店が多いのではないでしょうか?前回お伝えしましたが、売上拡大につながるメニュー管理はお店にとって一番のポイントです。健康診断と同じで、悪いところを把握し、改善する大事な作業でもあるので面倒がらず定期的に実施しましょう。
◆町の中華屋さんのケース
前回に引き続き、私が関わった中華料理店を例にとり、説明したいと思います。
このお店では
・POSレジがなく、手書きの注文書とジャーナルによるレジ管理を実施
・お客様からの要望により徐々にメニューを追加し、93品目の料理メニューを用意
・それでいて何が売れていて、何が売れていないかは感覚でわかっている
という状況でした。
さすがに93品目もあることにはびっくりしました。「メニューが増えがち」「売れ筋・死に筋はだいたいわかっている(正確には把握できていない)」といった現状にそろそろ歯止めが必要な状態になっていました。
◆メニュー(売上)分析
売れ筋・死に筋はだいたいわかっているという店主に対し、現状を見える化するため、注文書とジャーナルから3か月分をサンプルデータとして加工し、「月平均売上金額・メニュー別ABC分析」を行いました。
ABC分析とは、売上貢献順にグループをA・B・Cの3つに分けたもので、
①Aグループ:累積売上割合70%までのメニュー(主力メニュー)
②Bグループ:同70~90%のメニュー(明日の担い手メニュー)
③Cグループ:同90~100%のメニュー(見直しが必要なメニュー)
このお店ではAグループが93品目中22のメニューが、Cグループは全体の約半数である47のメニューが該当しました。
なお、Cグループだからと言って即座に死に筋と判断しないことです。メニュー化して間もない料理であったり、将来A・Bグループに昇格する料理(シンデレラ)かもしれないからです。
このお店の場合は、常連客を取込んでおり、彼らを呼び込むきっかけとなっているのであればメニューとして残すことを提案しました。従って、それらを見える化するために月平均の販売数・売上金額も合わせて確認しました。
その結果、販売数(注文数)が月平均3回以下で売上に貢献しない23品目を真のCグループと再定義し、47品目からの絞込みを行いました。
◆メニュー管理の必要性
メニュー管理が必要とされるのは、
①原価の見直し(メニュー管理(絞込み)ができていないことにより、原価率が悪化するから)
②売上の拡大(売れ筋メニューはお店のおススメとも言え、お客様にPRできるから)
を考えるためだからです。
飲食店ビジネスは非常に難しいビジネスです。
ここでは中華料理店の例で説明しましたが、中華料理店は食材の流用が可能なものの他の飲食店ではメニュー管理ができていなければ廃棄ロスによって原価率が悪化します。
また、一般的に個人の飲食店では提供するメニューの品目数が増えるほど、準備や仕込みに時間がかかり、作業も複雑になります。いつか無理がたたって店の営業そのものが困難になってしまいます。
最近ではあえて商品(メニュー)やサービスを極限まで絞ることで売上を上げているお店もあります。
例えば、京都にある国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」です。
このお店のコンセプトは
・1日100食限定のお店(だから、ひゃくしょくや)。
・安心、安全で美味しいものを皆様にご提供したい。
・誰でも食べに行ける値段にもこだわりたい
そのために、
・新鮮なものを食べてほしいから、冷凍庫がない。毎日100人分の食材を仕入れ、100人にご提供する。
・営業時間は11時~14時半の3時間半のみ
・メニューは基本的にステーキ丼、ステーキ定食、ハンバーグ定食の3つのみ(そのほかお味噌汁やサラダなどの
サイドメニューはあり)
と絞り込んでいます。
毎日完売で従業員も18時までに帰宅し、経営も成り立っていると聞きます。
飲食店の在り方は考え方次第ですが、佰食屋などを見るに「考え抜かれた経営は生き残ることができている」ように思います。
<今日のまとめ>
●メニュー管理は、原価率の低減と売上拡大を図るために必要な作業
●売上(利益)に貢献しているメニューと見直しが必要なメニュー(Cグループ)を肌感覚ではなく、数値化・見える化して管理する
●お店のコンセプトを考え抜いた末にメニューの絞込みができていれば生き残ることができる